芥川龍之介ポーズ広まる
<第1章 文芸家ポートレイト/文学賞事始>
---1 “円本”登場 文芸家をキャラ化
芥川龍之介は、改造社主催の講演会を行った年、自室で服毒自殺する(1927)。
35歳だった。
身内の借金の重圧とも、愛人問題とも、「読本」騒動とも、その理由はいわれている。
このとき、各新聞は写真入りでその自殺を伝えた。
芥川が客員を務めていた『東京日日新聞』(現『毎日新聞』)では、あごに左手をやる芥川龍之介の写真がもちいられた(撮影者不明)。
新潟高等学校で撮影されたポートレイト(1927)とは別になるが、同様のポーズは、芥川のパブリックイメージを産み出していくには十分だっただろう。
芥川の影響は大きかった。
改造社主催の小樽での芥川の講演会には当時22歳の伊藤整(代表作『文学入門』『女性に関する十二章』など)が訪れており、芥川に心酔していた青森の高校生・津島修治(太宰治)は、学友・藤田本太郎が撮影した写真に、芥川を気取ってあごに手をあてたポーズで写っている。
太宰は、芥川のポートレイトを通して文芸家というイメージを何度も何度も反復していたであろう。
芥川自殺の2年後には、太宰も自殺未遂を起こしている(1929)。
*原典:
私家版『文芸メディア発展史~文芸家/写真家/編集者の追いかけっこ~』(2016年9月発行)
*主な参考資料:
菊池寛『作家の自伝10 菊池寛』(1994/日本図書センター)
伊藤整「幽鬼の街」『街と村』(1939/第一書房)
太宰ミュージアム サイト(太宰ミュージアム運営委員)
『太宰治 生誕100年特別展』(2009/青森県近代文学館)
筆者執筆参加。文芸家26名のポートレイトを収めた写真冊子『著者近影』(松蔭浩之撮影・デザイン/男木島図書館2016年4月発行)は、MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店(渋谷)、タコシェ(中野)、NADiff a/p/a/r/t(恵比寿)の店頭などにて、現在手にとって頂けます。
収録文芸家:
青山七恵/池井戸潤/池澤夏樹/冲方丁/大野更紗/金原ひとみ/京極夏彦/窪美澄/沢木耕太郎/篠田節子/高橋源一郎/滝口悠生/谷川俊太郎/俵万智/辻村深月/堂場瞬一/早見和真/平野啓一郎/穂村弘/三浦しをん/道尾秀介/本谷有希子/森村誠一/山田詠美/吉田修一/吉本ばなな