戦後の"テレビ"メディアブームが写真家をキャラ化する 

<第3章 メディア化する写真家と非文壇の形成>

---1 表舞台に立つ写真家続々と―――キャラ化・私化

②―――お茶の間の人気者になった写真家・立木義浩

 

立木義浩は、徳島県出身。

立木写真館の息子として生まれた。

東京写真短期大学(現・東京工芸大学)で写真を学んだのち、できたばかりの企画・制作会社アド・センターにカメラマンとして入社。

週刊誌『週刊平凡』(1959年創刊)、男性向け週刊誌『平凡パンチ』(1964年創刊)の写真も手がける(ともに平凡出版*現・マガジンハウス)。

 

広告写真も手がける日々のなかで、写真家として名前が大きくクローズアップされたのは、『カメラ毎日』に掲載された「舌出し天使」だった(1965)。

27歳の年になる。

付録というかたちだったとはいえ、山岸の独断によって若手に56ページを割いたという独断と編集方針の独自性(写真構成・和田誠/詩・寺山修司/解説・草森紳一*「舌出し天使」というタイトルは安岡章太郎の同名小説から草森が命名)もあったが、ハーフモデルたちがカメラと戯れる何気ないショット、舌を出した写真を雪のなかで背負った少女の構図が強い印象を残した。

この年、立木は、日本写真批評家協会新人賞を受賞している。

 

その後しばらくしてフリーとなった立木は、フジテレビ系列の深夜番組『ナイトショー』へ出演(1969)。

「立木コーナー」と題した10分間のコーナーで、女性のヌード写真を手に、お茶の間へ写真論を語った。

 

立木は、撮る側から撮られる側になった。

立木は、街で声をかけられるようになり、木村伊兵衛でも写真家のあいだでのみ知られる人だったことからすると大きな変化だったと述べている。

 

また、立木によれば、毎週、初対面のモデルをヌード撮影したこのコーナーによって、ヌード撮影を身近なものにしたという。

 

 

*原典:

私家版『文芸メディア発展史~文芸家/写真家/編集者の追いかけっこ~』(2016年9月発行)

*主な参考資料:

立木義浩『コミュニケーション』(2003/集英社インターナショナル

大竹昭子『目玉の人 草森紳一と写真』(2009-11)

 

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筆者執筆参加。文芸家26名のポートレイトを収めた写真冊子『著者近影』(松蔭浩之撮影・デザイン/男木島図書館2016年4月発行)は、MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店(渋谷)、タコシェ(中野)、NADiff a/p/a/r/t(恵比寿)の店頭などにて、現在手にとって頂けます。

収録文芸家:
青山七恵/池井戸潤/池澤夏樹/冲方丁/大野更紗/金原ひとみ/京極夏彦/窪美澄/沢木耕太郎/篠田節子/高橋源一郎/滝口悠生/谷川俊太郎/俵万智/辻村深月/堂場瞬一/早見和真/平野啓一郎/穂村弘/三浦しをん/道尾秀介/本谷有希子/森村誠一/山田詠美/吉田修一/吉本ばなな