角川書店×電通×ワコール×資生堂×CBS・ソニー
<第4章 映画時代の終焉/音楽産業の前景化>
---2 1979 メディア間の交代劇
映画『エーゲ海に捧ぐ』の配給は、ATGとも関わりの深い東宝東和が手がけた。
当時、東宝東和は、“エーゲ海ブーム”を生み出せないかと考えていたという。
そのきっかけは、“ディスカバー・ジャパン”を仕掛けた電通の藤岡和賀夫を中心とした、ワコールと資生堂をスポンサーとしたクリエイターたちとの旅行だった。
池田満寿夫、CBS・ソニーのプロデューサー酒井政利(南沙織、郷ひろみ、キャンディーズ、山口百恵らを担当)、画家・横尾忠則、作詞家・阿久悠らがそのメンバーにおり、南太平洋で、広告のアイデアを考えるという贅沢なものだった。
この旅自体が話題にもなり、当時、南太平洋ブームも起こっていたという。
“エーゲ海ブーム”はそれに次ぐものが目指された。
実際、酒井は、CBS・ソニーから、南太平洋をイメージしたアルバム『Pacific』(1978)に続いて、エーゲ海をイメージしたアルバム『the AEGEAN SEA (エーゲ海)』(1979)を発売している。
『エーゲ海に捧ぐ』の小説はそもそも『野性時代』の編集者からの依頼によって書かれたものであり、映画化も、そもそも大掛かりな展開として計画されたものだった。
*原典:
私家版『文芸メディア発展史~文芸家/写真家/編集者の追いかけっこ~』(2016年9月発行)
*主な参考資料:
池田満寿夫『鳥たちのように私は語った 池田満寿夫対談集』(1977/角川書店)
速水健朗『タイアップの歌謡史』(2007/洋泉社)
筆者執筆参加。文芸家26名のポートレイトを収めた写真冊子『著者近影』(松蔭浩之撮影・デザイン/男木島図書館2016年4月発行)は、MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店(渋谷)、タコシェ(中野)、NADiff a/p/a/r/t(恵比寿)の店頭などにて、現在手にとって頂けます。
収録文芸家:
青山七恵/池井戸潤/池澤夏樹/冲方丁/大野更紗/金原ひとみ/京極夏彦/窪美澄/沢木耕太郎/篠田節子/高橋源一郎/滝口悠生/谷川俊太郎/俵万智/辻村深月/堂場瞬一/早見和真/平野啓一郎/穂村弘/三浦しをん/道尾秀介/本谷有希子/森村誠一/山田詠美/吉田修一/吉本ばなな