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<第5章 そして作家が消えた>

---2 出版社も消えた―――ネット場を巡って

②―『ファウスト』その後  アニメ監督・舞城王太郎  WEB編集長・清涼院流水

 

2009年、西尾維新の著作は、「西尾維新アニメプロジェクト」と題され、アニプレックス講談社・シャフトなどの製作でアニメ化が始まる。

メフィスト』掲載分や講談社BOXからの書き下ろしなど、『化物語』『刀語』『傷物語』『偽物語』が、3年にわたって放送された。

 

舞城王太郎の方は、編集者的な動きをみせていく。

舞城の作品は、『ファウスト』誕生直前から、旧来の文壇の壇上にあがっている。

『群像』(講談社)『新潮』(新潮社)の文芸雑誌に掲載され、芥川賞には4度候補となり、『阿修羅ガール』(新潮社)で新潮社主催の三島由紀夫賞を受賞した(2003)。

筒井康隆の圧倒的な支持を受け、「ときおり大きな字体のページがあらわれる。(引用者中略)面白くもなんともないただのこけおどしだ」などと宮本輝の大反対のなかの受賞だった。

けれども、ポートレイトや経歴を明かしていない舞城王太郎は、授賞式に登壇することはなかった。

 

これまで、“イラストーリー”を実践してきた舞城は、講談社BOXが創刊された年には、90年代に登場したニューメディアとなるWEBと、講談社青年漫画雑誌『モーニング』との連動で、“REAL MORNING COFFEE”を展開。

映像企画をアップし、制作会社を募った(2006)。

 

この試みは、やがて形になり始める。

WEB配信アニメーションシリーズ『日本アニメ(ーター)見本市』が開催される。

「日本のアニメの未来のために」と庵野秀明(代表作『エヴァンゲリオン』監督)が企画し、ドワンゴ(現・カドカワ傘下)の川上量生がエグゼプティブ・プロデューサーを務めた。

ここで、舞城は、アニメ『龍の歯医者』で監督・原案・脚本を手がけた(2014)。

 

その翌年、舞城は、安達寛高乙一の本名)・桜井亜美(小説家として幻冬舎よりデビュー)との3名で、“リアルコーヒー”として、実写短編映画を渋谷ユーロスペースで上映する(2015)。

“REAL MORNING COFFEE”は、乙・桜井・舞城との3名として“リアルコーヒー”へと発展していた。

制作・配給・宣伝のすべてを3人で手がけ、映画上映時には、来場者に書き下ろし限定小説を配布した。

 

この間も舞城は、講談社ノベルス電撃文庫KADOKAWA アスキー・メディアワークス)・メディアワークス文庫KADOKAWA アスキー・メディアワークス)をまたにかける覆面作家で乙も含む“越前魔太郎”の一人としても、舞城は活動している(2010)。

 

これほど活発な活動を続けながらも舞城は、乙のように一から出直すというようなことでなく、デビューから未だにその姿を明らかにしていない。

舞城は、こう述べている。

 

物語の受け取り方について、読者、視聴者、観客の方々の解釈を限定したくない、狭めたくない、独自性を確保したいという気持ちから姿も声もできるだけ出さずにお仕事をさせていただいています。

 

その後も、舞城は、00年代にニューメディアとして登場したTwitter上で、「深夜百太郎」と題した恐怖話を、写真家・佐内正史のモノクロ写真を添付し、つぶやいた。

同名の単行本化を行い、「入口」「出口」の2冊分にわけ、ナナロク社から出版した(2015)。

ナナロク社は、新興の社員数名の小さな出版社になる(2008-)。

 

このブロックの最後に、メフィスト賞出身者たちのその後も見ておこう。

 

清涼院流水は、編集長となり、WEB上に、The BBBを立ち上げた(2012)。

名称は、「時代の閉塞感を一点突破する先頭集団を志す本たち」の英文の頭文字からとられた。

全世界配信を掲げ、英語による電子書籍化を行っている。

メンバーには、森博嗣蘇部健一積木鏡介高田崇史秋月涼介矢野龍王メフィスト賞出身が名を連ねている(ここに桜井亜美も加わる)。

ここでも、その多くがポートレイトを公表していない。

 

 

*原典:

私家版『文芸メディア発展史~文芸家/写真家/編集者の追いかけっこ~』(2016年9月発行)

*主な参考資料:

 KAI-YOU「『龍の歯医者』はこうしてつくられた! 濃厚すぎるアニメ(ーター)見本市の裏側」(2014)

映画ナタリー「乙一、桜井亜美、舞城王太郎のオムニバス映画公開、イベントに岩井俊二や行定勲も」(2015)

 

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筆者執筆参加。文芸家26名のポートレイトを収めた写真冊子『著者近影』(松蔭浩之撮影・デザイン/男木島図書館2016年4月発行)は、MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店(渋谷)、タコシェ(中野)、NADiff a/p/a/r/t(恵比寿)の店頭などにて、現在手にとって頂けます。

収録文芸家:
青山七恵/池井戸潤/池澤夏樹/冲方丁/大野更紗/金原ひとみ/京極夏彦/窪美澄/沢木耕太郎/篠田節子/高橋源一郎/滝口悠生/谷川俊太郎/俵万智/辻村深月/堂場瞬一/早見和真/平野啓一郎/穂村弘/三浦しをん/道尾秀介/本谷有希子/森村誠一/山田詠美/吉田修一/吉本ばなな