電子掲示板→小説

<第5章 そして作家が消えた>

---2 出版社も消えた―――ネット場を巡って

③―――電子掲示板の書き込みを小説化  新潮社のベストセラー小説家・中野独人

 

舞城王太郎三島由紀夫賞を受賞した翌年、1冊の匿名の小説が発売される。

 

電子掲示板・2ちゃんねる(1999年開設)の書き込みを元に書籍化した『電車男』になる(2004/新潮社)。

翌年ベストセラーの7位(出版指標年報)に。東宝配給で映画化もされた(監督は共同テレビジョン村上正典)。

 

中野独人の著者名は、掲示板に書き込んだ多数の人物の総称になる。

出版時は2ちゃんねるの開設者の西村博之・“まとめサイト”の作成者・主人公と思われる人物が関わった。

 

担当編集者・郡司裕子は、書籍のパブリシティのため、自身がメディアに登場。

“美人編集者”の見出しもつけられる。

出版にあたって郡司は、“アスキーアート”と呼ばれる文字や記号をもちいた絵文字の再現の苦労を語った。

 

「半角文字などは印刷の世界では本来存在しないものということになっているらしいんですよ(引用者中略)おかげで印刷所の人にはずいぶん、面倒をおかけしてしまいました」

 

*原典:

私家版『文芸メディア発展史~文芸家/写真家/編集者の追いかけっこ~』(2016年9月発行)

*主な参考資料:

 「電車男を現実社会に引き入れた美人編集者」(『FLASH』2004年12月28日号)

 

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筆者執筆参加。文芸家26名のポートレイトを収めた写真冊子『著者近影』(松蔭浩之撮影・デザイン/男木島図書館2016年4月発行)は、MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店(渋谷)、タコシェ(中野)、NADiff a/p/a/r/t(恵比寿)の店頭などにて、現在手にとって頂けます。

収録文芸家:
青山七恵/池井戸潤/池澤夏樹/冲方丁/大野更紗/金原ひとみ/京極夏彦/窪美澄/沢木耕太郎/篠田節子/高橋源一郎/滝口悠生/谷川俊太郎/俵万智/辻村深月/堂場瞬一/早見和真/平野啓一郎/穂村弘/三浦しをん/道尾秀介/本谷有希子/森村誠一/山田詠美/吉田修一/吉本ばなな